「リモーネ、リモーネ。」というアナウンスに、有名な観光地らしく、たくさんの人が一斉に立ち上がり連なって船を降りて行く。小さな船着き場のジェラルディ広場Piazzale Gerardi は、船を待っている人と降りる人とでみるみるいっぱいになっていった。

リモーネは、岩山に覆い囲まれ、まるで小人の国のような小ささと、沢山の人を魅了するだけある華やかさを持った町だ。身動きが取れないジェラルディ広場から脱出するために、慌てて人の波に乗って、行き先も分からず進んで行く。港を出てすぐ、こぢんまりとしたお土産物屋さんやリストランテが軒を連ねる短いトンネルを抜けると、穏やかで光に満ちた小さな昔の港!?ポルト・ヴェッキオPorto Vecchio が現れた。

数隻の小ぶりのボートが、フワフワと波に漂っている水辺の風景に、「このままここでお昼寝がしたい!!」と思っていると、発見!!釣り糸を垂らしながら、寝ているおじさん達の姿は“のどか”そのもの。

山側には、家々の壁を彩り咲き誇る花々の更に後ろに荒々しい岩肌が迫ってきている。このコントラストの美しさに感動。

ポルト・ベッキオが面したポルト通りvia Porto をそのまま南に進むと、ガリバルディ広場Piazza Garibaldi の前に出た。

湖に面したこの広場の、1階にお土産物屋さんがある建物の外観は、チロル地方を思わせる梁の目立つもので、ゴツゴツとした岩肌の向こう側(北)にアルプス山脈、そしてスイスへとこの地が繋がっていることを物語っている。意図的な演出かもしれない。でも、その意図通りに、陸続きの隣国に想いを巡らしてしまう。
ガリバルディ広場から更に南に行くと、道は湖沿いのマルコーニ通りLungolago Marconiと、目抜き通りであるコンボーニ通りvia Comboni とに分かれていた。
マルコーニ通りには、湖の風景を目当てにしたレストランが建ち並んでいて、 この町のサイズを考えると不釣り合いなほど収容人数の多い大型レストラン揃い。観光地ならではの雰囲気なので、趣はあまり無い。しかし、丁度お昼時ということもあって、どのお店も賑わっていた。

パニーニやフルーツなどの食材を買い込んで、ハイキングというのも気持ちがいいだろーなと思いつつ、道沿いのレストランをひと通りチェックした。雰囲気やテーブルに載っている料理、客の入りなどの良さそうなお店を選んで、テラス席に腰を落ち着け、さっそく注文!料理はおいしかった。ただ、一番印象的なのは、‘添えてある’フライドポテトの量。茶碗一杯くらいあったかなぁ。

ゆっくりとお昼を済ませた後、重たくなったお腹を引きずりながら、食後の運動も兼ねてメインストリートのコンボーニ通りを歩いてみることにした。

この通りには、八百屋さん、靴・鞄屋さん、お菓子屋さんなど、町の生活の中心となるお店とお土産屋さんとが混在している。道幅はうんと狭く、間口の小さなお店が連なっている上に、大きな観光客(ドイツ人!?)が多いせいなのか、小人の国の賑やかなお祭りで露店を見歩いているような感覚。

買い物をしている人達の熱気につい刺激され、思わず○○○を購入。ちょっとしたノリからまた一つ、といった具合に買い物をしてしまった。‘物’との出会いもまた旅の思い出と、一人納得するのだった。商品選びのために店員さんとあれやこれやとやり取りしたので、楽しくエネルギーを使ったのか、だいぶ体も軽くなってきた。

この町に訪れることを決めたきっかけの風景で、同じガルダ湖畔にある港町サローの船のチケット販売所に貼ってあったポスターの風景を生で見るために、サン・ベネデット教会Chiesa di S.Benedettoの上のバス停あたりの高台を目指して坂道を登ることにする。

ものすごく急な坂道をやっとの思いで登り切り、その風景に出会う、ハズだった。しかし、残念なことにフェンスが邪魔をして思うような風景に出会えなかった。 それに、アングルがちょっと違う。
もっと高い場所から撮った写真だったのかな、と諦めて湖に向かってロヴィナ通 りvia Rovina を下る。登るとき、急な角度であるために前傾姿勢で大変だったが、それ以上に下りは転げ落ちる感じで恐ろしい。

家の壁やその壁に備え付けられている手摺りを頼りに、へっぴり腰で船着き場のあるジェラルディ広場に戻り着いた。 何気なく山の方を見上げたとき、ちょっと上がった所に白くて小さなサン・ロッコ教会Chiesa di S.Rocco が見えた。今度は、この教会のこぢんまりとした素朴な様子に惹かれて登ってみることにする。
ヌォーヴァ通りvia Nova を少し北へ登った途中に階段があり、そこを上がると、サン・ロッコ教会の前に出た。 急な勾配の階段なので、手をつきながら這うようにして登った。一息ついて視界の開けている方へと目を向けると、
眼下に探していた景色が広がっていた。
残り30分ほどでこの町を去らなくてはいけない私たちへの、贈り物のような瞬間だった。そして、今は閉鎖された素朴なサン・ロッコ教会が、しっかりリモーネの町を見つめている風景写真だった。