知り合いからリグーリアに行ったらぜひ、と教えられた街チェルヴォへは、サヴォーナSavona方面 からフランス方面へ向かう列車で、西隣のディアノ・マリーナDiana Marinaまで急行で行き、それからタクシーで向かった。海沿いを走り始めてすぐ、前方の丘に白く魅力的な教会が飛び込んでくる。信号を過ぎるたびに近づいてくる街は、聞いていた以上に美しい。(ウーンッ、ちょっと洗脳されていたかもしれない)丘を登る体力を持ち合わせていない仲間との旅行だったので、タクシーをいっきに街の頂上へ向かわせた。
  丘を軽く登っていくと、駐車場のような広場に到着した。この街もまた城壁に囲まれた街なのだった。城門をくぐって中に入る。小さな広場に隣接したエントランスの風景は、ただただ静か。車が街中を走れない事もあって(路地は狭く、階段も多い)、本当に静かな街だ。あの白く輝く教会に続く3本の道を、「じゃあ教会前で会おう」と、3人バラバラに自分の選択した道を進んで行った。

一人になると、通りに反響する自分の靴音が静けさを増していく。教会前の広場近くでみんなと合流。その地点からヴァイオリンの音色が聞こえ始めてきた。なんだか妙に得した気分。

先の道がぱっと開けると、海の見渡せる広場に続いていた。それ程大きな教会ではないけれど、湾曲したバロック様式の大きなファサードが広場に突き出た様は、見るものを圧倒させる。その姿を一枚の写 真に納めることはとうてい無理だと分かっていても、美しいものを残したいのは、旅人の悲しいサガ。

それにしても、遠くの海岸まで望める今日の天気の良さが嬉しい。

教会の中ではミサが行われ、厳かに賛美歌が響いていた。 そろそろ何処か景色の良いトラットリアでゆっくり食事をとりたい気分。さっきまで流れていたヴァイオリンの音色はいつしか消えていた。音楽家も昼食の時間かもしれない。
   
知り合いのお薦めリストランテは、すぐに見つかった。確かに景色が売り物のひとつのようだ。
我々にとってこの店は、景色と食事を楽しめるだけの場所じゃなく、後々思わぬ 出合が続く出発点となっていった地点でもあった。と言うのも、日本人に出会うだけでも珍しいこんな小さな街で、3人分かれて進んだ道の一本で、品の良い日本人の御夫婦と一度、この店で再度、出会ってしまったのだった。お互い、こんな小さな街を旅先に選ぶなんて、と親しみを感じて別 れたにもかかわらず、その後行く先々で合計7度出会ったり見かけたりする事になったのだった。
 
この街の魅力は、何と言ってもこの白いバロック教会が代表している。その他には?特に思い浮かぶものは無い。しかし、中世の小さな街と海を望む神々しい教会。それだけで旅人は十分満足して帰れるのだ。けれどもここは、ただの中世の雰囲気の残る街じゃなかった。

食事を終えて通りの出ると、さっきまで聞こえていたヴァイオリンの音色が再び鳴りだした。

音の先をたどると、古い教会のホールにでた。そこには若い音楽家がレッスンを受ける為に集っているふうだった。そこへ、日本人の女の子が階段を登って、まさにこのレッスン場へ向かうところに出くわした。単純に、何でここで?と思い尋ねると、この街は夏の間、クラッシック音楽の夏期講習が開かれるので、有名な?音楽家のレッスンを受けるために、若い演奏家が集まるらしいとのこと。

 
後で分かったことだが、毎年7月8月にはこの町で、国際室内楽フェスティバルが開かれているらしい。

美しい景色と、街のざわめきから無縁の街だからそんな環境を呼んだのか、五感で美しさを堪能できる愛らしい街。ここはバロック教会と音楽の丘の街チェルヴォ。