「このバスはフィナルボルゴに行きますか?」
「フィナルボルゴ行きのバス停は何処ですか?」

フィナーレ リグレのFinale Ligureの駅前にバスが停車するたび、何度運転手に同じ質問をしたことか。彼が指をさした道沿いに、バス停は見あたらない。もっと先にあるのかもしれないと、コーナーを曲がって覗いてみる。やはり見当たらない。気がつくと、駅前で誰かを待っているふうの女性が、さっきから教えたそうにこっちをチラチラ気にしている。そこで、今度は彼女に尋ねてみた。待ってましたとばかりに教えてもらった場所は、(ここから先は言い訳のように聞こえるが)なんとも見つけ出しにくい場所で、カーブした道と電車の高架とアパートやらで、やたら見つけにくくなっている歩道に、黄色いポールが目印のバス停がちょこんといらっしゃった。やれやれ。
探すこと10分。バスに乗ってボルゴまでは5分弱。隣町なだけに、それこそあっという間に到着。バスは小川に架かる橋のたもとに留まった。町は何処?と思った次の瞬間、うわーキレイ。町を囲む三方の山が午後の日差しに白く霞みがかり、町の横を流れる小川沿いの並木は色鮮やかにきらめいている。町へ入る石橋の先にフレスコ画の美しいレアール門Porta Realeが構え、周囲を城壁に守られている。一際目だつ八角形の先頭を持つ建物は、イタリアではない何処か他の地域のヨーロッパをイメージさせ新鮮だ。
レアール門をくぐると、教会前の静かな広場Piazza S.Biagioに出る。まるでパティオのように、話声が反響して面 白い。教会は、外観から想像もつかない程厳かで豪華な内部を持っていた。

ひっそりと構える店のウィンドー達を覗きながら、細い路地をそれこそ20m位 歩くと、まるでテーマパークの中に入り込んだような広場があった。広場の半分は可愛らしい噴水を囲んで赤ちゃんからお年寄りまで、町の人達がベンチに座ってワイワイ賑わっている。もう半分はバールのオープンカフェ(セルフサービス)になっている。白いパラソルの下で小学生らしい男の子と女の子がジェラートを頬張りながら、牽制し合っている光景が微笑ましい。私達もここでカプチーノを頂こう。
以前ヴェネト州のチッタデッラCittadellaという町に行った時、城壁の町の中ではイタリアで最も小さい町の一つに違いないと思った事があったが、ここは活力のある城壁の町として、最も小さい町の一つじゃないだろうか。町の人は皆この町を好きでたまらないのだろう、そう思わせる広場の風景だ。
さあ、カップを戻して、この小さい町の探検に行こう。広場から伸びる小道には、美しく絵が描かれたアーチをくぐっていく道、山を背景に歴史を感じさせるフレスコ画の門に続く道があり、いずれもアッという間の短い通 りばかりだ。

歩き廻るうち、何やら発掘調査現場の一角に出た。発掘中の人達に誘われるままブルーシートの中へ、体を土にもてあそばれながら滑り下り、15世紀の建造物跡を見せてもらった。(作業服がほしい・・・)私としては古い建造物跡よりもむしろ、そこで発掘している大人達が皆楽しそうに土いじりをしている姿の方に興味をそそられた。


ひと通り散策した後、町の高台に建っているお城へ向かった。登るという表現がふさわしい小山を、くねくねと登って行く。土埃と石がゴロゴロ転がっている山道は、靴はもちろん私の紺のパンツを白っぽく化粧させて行った。

少しずつ眼下に広がる盆地の町ボルゴと海側の町フィナーレ リグレ、そしてその先にほんの少し見える海の景色が、我々を先へ先へ、上へ上へと後押ししてくれる。だから振り返っては、ついシャッターを切ってしまうのだ。

「いい景色だね。」「綺麗だね。」

何度となく出る言葉に頷くばかり。はたして、お城は閉まっていた。それは残念な事だったけど、いつしか目的は、この山道の先には何が見えるんだろう、という話にすっかり変わっていた。道はお城の後ろに回り込み、ずっと先へ山の稜線上に伸びていた。その先にある何処かに想像を寄せながら、やむなく来た道を戻る事にした。(なにしろヘトヘトだったのだ。)
海からの風は、うっすら汗をかいた額に気持ち良く流れていく。あの楽しい広場を通 り、始めに入った教会前広場に戻ってきた。ちょうどそのとき機関車型の車が、大勢の大人達を乗せ、変わったスラブ風の音楽を鳴らせながら、門から入って来るところだった。こんな違和感のある不思議なシーンも、この町なら妙に馴染んでしまう。
この町は本当にテーマパークなんじゃないだろうか?
しかし・・・。気になる疑問を棚上げにして、最後まで楽しい気分にさせてくれたボルゴは、私のお気に入りの町になった。